ソムニードの基本理念と中期方針

ソムニードの 基本理念と中期方針

(2007年度〜2010年度)

SOMNEED Philosophy & Mid-term Guidelines

<理念と現状認識>


 定款に謳う特定非営利活動法人ソムニードの活動は、いわゆる発展途上国の貧困層、特に貧困ライン以下の層の生活の向上を図り、また、彼らが、国際連合が1956年に採択した国際人権規約に定める諸権利を、世界の他の地域の人々と平等に享受できる状態を実現すること、そして、そのための活動を通して、日本に住む我々の生活を見直すことを目的とする。また、いわゆる発展途上国の農村、都市貧困層の自立のための自助努力を支援することを開発と定義する。我々は、開発を、より良い地球環境と人類社会の確立を目指す活動の一環として位置づける。

 このことを、国際協力活動を含む、住民参加型の地域の活動として根付かせることが望ましいとソムニードは認識している。
 しかしながら、「貧困」とはあくまでも現象であり、ソムニードが目指すのは、そのような現象が起因する課題を解決する方策を模索し、実践することである。そして、ソムニードは、そのような課題が、開発途上国のみならず日本をはじめとするいわゆる先進諸国も含む世界全体に共通のものであると認識している。日本における地域の課題への取り組みが、ソムニードの活動の重要な柱と位置づけられている所以である。


 ソムニードは、世界の現状を大まかに以下のように認識している。

グローバル化で象徴される現代は、大いなる可能性の時代でもあるが、また人類史上最も富の不均衡が際立つ社会である。特に最近10年、この傾向は著しく拡大している。
人間社会の3大構成要素;経済、環境、コミュニティのうちの経済が突出し、経済の土台そのもの、すなわち環境、コミュニティを著しく脅かし、この構成要素間のバランスをそこなっている。
(i)と(ii)は、表裏一体の関係にあり、特に(ii)における市場経済の突出が、先進国と途上国とを限らず、地域のコミュニティ、特に農村部のコミュニティに深刻な危機をもたらしている。

 特に開発途上国の僻地の農村部では、外部からの圧力による自然資源へのアクセスの低下、市場経済への地域経済の否応なしの統合などが、十分な準備期間と保護策もなしにおこっている。したがって、この波に抗しきれないコミュニティは崩壊していき、住民は都市への実質的な難民として流出していく。それは社会の安定への大きな脅威であり、また、後に残された自然資源の荒廃をもたらし、貧困と自然の荒廃の悪循環を生み出している。
これを別の角度から見ると、income poorではあるが、resource poorではなかった人々が、income poorでありresource poorでもある状態に陥ることである。これが富の不均衡をより深刻なものにしている。そして、都市における貧困と農村における貧困とは、相当な部分、同じコインの裏表の関係にあるとも言えるのである。われわれは、開発と言うとき、このような観点から、農村と都市を総合的に捉えなければならない。
 また先進国の地方社会においては、地域コミュニティの高齢化、過疎化の問題として顕著に表れている。このことが自然資源の荒廃をもたらし、自然災害による被害の深刻さを招く一因ともなっている。

 ゆえに、ソムニードが当面活動の方針とするのは、コミュニティの再生、強化である。すでに崩壊しつつあるコミュニティの再生と、まだコミュニティが揺らいでいないところでは、グローバル化に伍し、新しい波とコミュニティの本来的な長所のバランスをとっていける強さを作り出すことである。それは自然資源を中心としたコミュニティの共有財産を、コミュニティが新しい社会環境の中で維持、管理、運営していく状態をつくりだすことが核となる。すなわち、コミュニティによる自然資源を中心とした共有資源のガバナンスである。

 このことを通して、経済、環境、コミュニティのバランスが取れている状態とはいかなることであるかを、模索し、将来あるべき社会のモデルを構築する。そのためには、住民による新たな状況の理解、知識の取得と、住民のリーダーシップの育成が不可欠である。このことは、外部機関のわれわれにとって、地域住民との長期のパートナーシップの醸成があって、はじめて可能となる。

 しかしながら、この様な取り組みは、すでに時間との競争となっている。なぜなら、一見、昔ながらの強固なコミュニティが存続していると見られるところでも、公的教育の導入、市場経済の浸透などで、昔ながらの文化が明らかに失われつつあり、このままではコミュニティ、環境、経済が一体となって作り上げていた人々の関係性が崩壊することは明らかであるからである。表面的には昔ながらのコミュニティの面影を色濃く残しているところはまだ世界の各地に見受けられるが、昔ながらのコミュニティがまだ濃厚に残っているということは、そこがこの様な危機に直面していないということとイコールではない。この様な過程があっという間に起こり、気がつけばコミュニティが跡形もなく崩壊していたという例は枚挙にいとま無く、特に第2次大戦後の日本がつぶさに体験してきたことと重なる。そして、その崩壊の過程が、自然資源管理の喪失と重なることも、日本の明治以来の歴史や、世界の他の地域の近代化の歴史で明らかである。
すなわち、コミュニティが往時に管理運営していた資源に対するオーナーシップを失うと同時に、資源の明らかな荒廃が始まったのであり、その管理運営が国家によって担いきれないことも、同じ過程で証明されてきた。ゆえに、コミュニティによる資源のガバナンスとは、より広いユニット(広域の地方行政も含む国家)とコミュニティとで、どのようにガバナンスを分け合うかという、バランスの良い棲み分けの問題でもある。
 

 さて、共有資源のガバナンスと言った場合、ポイントとなるのは、以下の2点である。

限られた資源を使っていかにコミュニティの需要を満たし、なおかつ同時に資源を保全していくか。

・コミュニティが、そのようなガバナンスを行うには、どの程度の範囲が地理的な広がりとしては適切なのか。


(1)に関しては、農村部では特に自然資源の利用が耕地としての土地利用の拡大に傾斜しており、そのために森林の荒廃を招き、水の枯渇を来たし、ついには土壌そのものが崩壊するという悪循環に陥るケースが多い。ゆえに、土地の生産性そのものを高めることと、土地以外の資源の活用を、総合的に模索しないことには、この悪循環を断ち切ることはできない。また、農村部で顕著なことは、キャッシュフローの不足である。農村部に於いては、都会ほどキャッシュが絶対的な収入の基盤とはなっておらず、従って、キャッシュのフローを確保することが、いわゆる目先の収入向上より優先課題となる。

(2)に関しては、(1)と関連して、森林、水、土地全てを総合的に対処するために、マイクロ・ウォーターシェッドを中心とした範囲を想定することが適当と思われる。すなわち、水源涵養地をめぐる周囲の自然環境(居住地、耕地も含む)を総合的に管理することが、必要だからである。
 日本においても、昨今、地域住民の参加による道路、河川行政などが推進されつつあるが、その根底にあるのは、これまで述べてきたように、資源の管理を誰が主体となって行うのか、すなわち、行政と住民が何をどこまで互いに責任を持って管理していくのかという課題である。その意味で、上記の状況は日本においても開発途上国においても基本的に変わらない。




<中期方針>


 以上のような理念と現状認識に基づき、ソムニードは、平成19年度(2007年度)から平成22年度(2010年度)までの中期的期間に以下のような事業区分を導入し、その活動を進めていく。

地域開発及び地域自立支援に係わる事業
人材育成及び研修生受入に係わる事業
調査・研究等に係わる事業
国際理解の推進と啓発に係わる事業
地域活動支援に係わる事業
その他本法人の目的を達成するために必要な事業



1.地域開発及び地域自立支援に係わる事業

マイクロ・ウォーターシェッドを中心とした農村部での取り組み、及び人的資源、ソフトを中心とした都市部での取り組み、そして両者の有機的連携を目指す。その際、現状認識、企画運営を中心とした技術移転を主軸とする。
農村部では、水源涵養地を中心とする森林再生、植林、砂防など適切な事業を通して、食糧の安全保障と環境保全のバランスをとる。
そのために地域住民の資源へのアクセス権を保証する。この場合、JFM(政府との森林共同管理)のように、すでに一部権利として国有財産への管理権を認められている場合は、その実効性を高める。

太陽光、風力、渓流発電などの循環型の分散型小規模エネルギーを、エネルギー源として推進する。その際、以下の点に重きを置く;
周囲の環境を損なわない。また、環境の保全こそこのような代替エネルギーの維持管理に必要であることを、意識化する。
コミュニティによる無理のない維持運営を計り、コミュニティの能力を(潜在的能力も含む)超えるものは持ち込まない。
上記を住民によって実現するための新しい技術、適正技術の導入。その際、伝統的な知識、技術を尊重し、新たに導入した技術が従来の知識体系に無理なく組み込まれるよう、留意する。
また、都市部に於いては、人的資源を中心としたソフト資源の共有化を図り、住民の地域資源の自主的管理の確立を目指す。これには、高齢者などを含む相互扶助も含む。
上記を達成するためにソムニードが外部機関としてなすべきことは、以下に示す活動の各ステージにおける適切な方法論と指標をパートナーと共に作り出すことである。

パートナーシップの構築
コミュニティに根ざした課題の分析
活動計画
実施とモニタリング
評価とフィードバック




2.人材育成及び研修生受入に係わる事業

以上のプロセスを強化するためには、相互学習と経験の共有に基づく教育が不可欠である。ソムニードは、以下を対象とする能力向上のための研修を行う。

CBO (Community Based Organization)
NGO
PO (People’s Organization)
政府機関
国際協力や地域開発の専門家を目指す個人や団体
その他、必要に応じた個人、団体への研修


研修に当たっては、以下を目標とする。

農村部コミュニティの住民組織に対しては、市場経済の進出に象徴されるあらたな社会的環境の中で、自然資源を維持管理する能力を開発する。特に以下のもの:

新たな制度的枠組みの理解
計画策定及び運営能力


適切な研修によって、資源管理のための住民の決定プロセスへの参加を促進するが、その際、以下の点に重きを置く;
新たなリーダーを発掘、育成する。或いは、従来のリーダーに、新たな文脈に対応できるリーダーシップを獲得させる。
決定プロセスに於いて特に女性による決定への参加を促すべき時は、そのような意識と行動の醸成を計る。

NGOに対しては、上記の研修を行うことを可能にする能力の醸成、ファシリテーション技術の向上を目標とする。
POに対しては、特に、マイクロ・クレジットなど具体的な適正技術の研修を通じて、コミュニティ開発との連携を促進できる能力醸成を計る。
政府機関に対しては、上記の事項に対する理解力の向上と、NGO等との連携のための実質的な能力の醸成を計る。


3.調査・研究等に係わる事業

 調査に関しては、理念と方針の枠組みに従って自主、委託を問わず適宜行うが、特にODAからの委託調査に関しては、当方の理念、方針との整合性に留意し、双方に益となる条件下においてのみ受託する。また、あいあいネットのような志を同じくし、その活動が互いを補完するような場合に於いては、積極的に協働して調査を行う。



4.国際理解の推進と啓発に係わる事業

 以上の活動を基にした政策提言と啓発を、以下の手段を通して行う。

ドキュメンテーションと出版
フォーラム、セミナー、ワークショップ、研修の開催
会議(国際会議含む)の開催と参加

 以上の活動は、日本国内に於いても、基本的には同じであるが、特に以上の活動が国内と国外とで協働しながら取り組まれなければならないことを啓発していく必要がある。また、開発途上国や日本国内での取り組み、活動を保証するための財政基盤を確立する活動を行う。


よって、上記の地域コミュニティでの活動を支えるためにも開発教育に力点を置くべきであり、その際、概念的なことにとどまることなく、実際の日常的な活動を通じた教育が行えるような工夫をしていく。例えば、途上国でクラフトの素材を開発し、日本のユーザーに提供する。この事業そのものが、途上国のわれわれのパートナー、特に女性の自立、自尊のための活動の一環として行われ、且つ資源のリサイクル、再利用に貢献する者と位置づける。
また、この観点から、地域における定住外国人との共生、協働も、新たにコミュニティを活性化するためには欠かせない取り組みである。
さらに、日本における支援者の拡大、資金調達活動を、ソムニードの理念、活動の普及の一環と捉え、情報の公開と健全な議論の場として位置づける。


5.地域活動支援に係わる事業

 ソムニードの理念、方針に基づく独自の活動の他に、同じ地域のNPO、NGO、POとの協働、支援は、非営利活動全体の発展と向上のために必要な活動である。特に、国内にNPOを根付かせるための技術的支援、また制度的な基盤づくりもこのために重要な活動であると位置づける。


6.その他本法人の目的を達成するために必要な事業

知的貢献活動(行政の各種委員会などへの参加等)は、この区分に入れる。
管理等の組織を維持するための活動も、ここに入れる。





ソムニードの基本理念と中期方針 2007年(平成19年)6月起案